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林業

広葉樹林から生まれるエネルギー資源。

富山県森林組合連合会

富山県森林組合連合会の動画(2021年9月撮影)

広葉樹のエネルギー利用に向けた新たな取組み

178,000ヘクタールの民有林を持つ富山県。そのうち60%以上は、薪炭林としての役目が終了し半世紀以上手つかずのまま残された天然広葉樹林だ。広葉樹はキノコ栽培の原料として需要が高まっており富山県においても伐採利用が増加してきているが、利用されるのは主に幹部分のみで、枝条部分は現地に放置されてきた。本プロジェクトでは、伐採利用で残された広葉樹の枝条部分をエネルギー資源として活用するため、枝条の資源量を計測する技術を確立し燃料としての実用性や生産手法を検証するとともに、枝条のエネルギー利用の事業化を図ることで県内森林組合への事業の推進を目指す。これまで放置されてきた枝条を資源として活用することで、出材の採算性向上や天然更新の阻害要因の除去、SDGsにつながる地球温暖化等の環境問題対策、さらには豪雨時の林産物流出による被害予防等にも好影響を与えることが考えられ、本プロジェクトを全国に発信することで他地域のモデルとなることも期待されている。

助成対象事業の
評価ポイント

富山県森林組合連合会は、県内4つの森林組合を束ねる連合会であり、県内唯一の木材市場を有している他、これまでも高性能林業機械を利用して素材生産ができる担い手を育成する等、生産体制の整備に取り組んできました。富山県の山林は、比較的人工林が少なく、天然の広葉樹林が多いのが特徴です。広葉樹は、主に菌床キノコ生産のためのオガ粉や、バイオマス発電所の燃料として活用されてきましたが、活用されているのは幹の部分だけで、枝の部分は伐採現場に放置されることもありました。本プロジェクトは、富山県森林組合連合会がドローンと地上レーザによる計測データを活用して枝の資源量を推定する技術を確立。さらに、現地でチップ化された枝を伐採された幹とあわせて低コストで搬出し、バイオマス燃料として活用するまでのプロセスを事業化した後、森林組合への推進を図る取組みです。幹だけでなく枝も含めた資源量の把握や、採算性の評価、バイオマス燃料としての活用を可能とすることで、森林所有者の手取り増加、広葉樹の天然更新の促進、災害防止に繋がることが期待されましたので、当基金から後押しを行っています。

富山県の林業が抱える課題

富山県の林業が抱える課題 イメージ

富山県には杉の人工林と天然広葉樹林があり、広葉樹林の広さは杉の約2倍の面積に及ぶ。近年富山県の天然広葉樹林はキノコ生産のためのオガ粉やバイオマス発電所の燃料として少しずつ活用されてきたが、使われるのは幹の部分のみで用途のない枝条部分は森林に放置されてきた。枝条部分が森林に放置されると、森林伐採後、自然に落下した種子や萌芽から樹木を育成させることで再生を図る「天然更新」を阻害する要因となる他、豪雨時に森林内からの林差物流出による被害を促す等、森林保全に悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
また、これまでも広葉樹の幹の部分はバイオマス発電所の燃料として活用されてきたが、十分な量は確保できておらずより多くの燃料材料の供給が必要とされていた。

限りある森林資源をエネルギーとして有効に活用するために

そこで、富山県森林組合連合会が中心となり実施したのが広葉樹の枝条部分をバイオマスエネルギーの資源として活用するための取組みだ。プロジェクトの要となったのが、枝条部分に含まれるバイオマスエネルギーの賦存量を計測する方法の確立である。

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プロジェクトに参画する中日本航空株式会社の吉田さんはこう話す。「今回我々は上空からと地上から2通りでレーザ計測を行っております。地上から計測するデータは、幹や枝葉(のデータ)を詳細に取ることができます。ただし一度に大きな範囲を測定することはできません。対して上空からのレーザ、こちらの方は上空から一度に広い範囲を撮影することができますが、幹や枝葉は地上レーザに比べるとデータの詳細さは落ちます。これらを比較するために2通りの計測を行っております。」
広範囲を測量できる大型ドローンによる航空レーザ計測のデータを、幹や枝葉の細かい部分も捕えた地上レーザ計測によるデータで補完することで、より正確な賦存量の計測技術を確立した。

限りある森林資源をエネルギーとして有効に活用するために イメージ

さらに、集積された枝条の運搬効率を上げるため現地でチップ化する機械を導入したり、エネルギー利用に向けたチップの燃焼試験等を行ったりすることで、燃料としての実用性や生産手法を検証し事業化に向けて動き出している。

富山県から発信する森林資源循環モデルの可能性

富山県から発信する森林資源循環モデルの可能性 イメージ

使い道がなく廃棄されてきた枝条をバイオマス燃料として活用することで、森林所有者の手取り増加や広葉樹の天然更新の促進、さらには災害防止にも期待が持たれている。
富山県森林組合連合会副会長の柳原さんはこう語る。「今後も工夫しながら、林業の採算性を高めていければと思っております。」

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さらに、同会会長の伊東さんも今後についてこう意気込む。「林家の皆さんも大変苦労いただいており、課題は数多くあると思いますが、山に住みたい人が(当たり前に)住めるような応援を、頑張りたいと思います。」

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本プロジェクトが成功すれば、富山県のみならず、日本各地の森林地域で活用できる森林資源循環モデルとなるだろう。富山県森林組合連合会の取組みが、緑豊かな未来を創っていく。

助成先の組織概要

富山県森林組合連合会

富山県内4つの森林組合を束ねる連合会。これまでも、県内森林組合と協力し、人工林資源の充実に伴い、効率的な木材生産システムの確立に取り組んできた。ドローンと地上レーザによる計測データを活用し、幹だけでなく枝も含めた資源量の把握や、採算性の評価、バイオマス燃料としての活用を可能とすることで、森林所有者の手取り増加や広葉樹の天然更新の促進などを目指している。

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