富山県の林業が抱える課題

富山県には杉の人工林と天然広葉樹林があり、広葉樹林の広さは杉の約2倍の面積に及ぶ。近年富山県の天然広葉樹林はキノコ生産のためのオガ粉やバイオマス発電所の燃料として少しずつ活用されてきたが、使われるのは幹の部分のみで用途のない枝条部分は森林に放置されてきた。枝条部分が森林に放置されると、森林伐採後、自然に落下した種子や萌芽から樹木を育成させることで再生を図る「天然更新」を阻害する要因となる他、豪雨時に森林内からの林差物流出による被害を促す等、森林保全に悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
また、これまでも広葉樹の幹の部分はバイオマス発電所の燃料として活用されてきたが、十分な量は確保できておらずより多くの燃料材料の供給が必要とされていた。
限りある森林資源をエネルギーとして有効に活用するために
そこで、富山県森林組合連合会が中心となり実施したのが広葉樹の枝条部分をバイオマスエネルギーの資源として活用するための取組みだ。プロジェクトの要となったのが、枝条部分に含まれるバイオマスエネルギーの賦存量を計測する方法の確立である。

プロジェクトに参画する中日本航空株式会社の吉田さんはこう話す。「今回我々は上空からと地上から2通りでレーザ計測を行っております。地上から計測するデータは、幹や枝葉(のデータ)を詳細に取ることができます。ただし一度に大きな範囲を測定することはできません。対して上空からのレーザ、こちらの方は上空から一度に広い範囲を撮影することができますが、幹や枝葉は地上レーザに比べるとデータの詳細さは落ちます。これらを比較するために2通りの計測を行っております。」
広範囲を測量できる大型ドローンによる航空レーザ計測のデータを、幹や枝葉の細かい部分も捕えた地上レーザ計測によるデータで補完することで、より正確な賦存量の計測技術を確立した。

さらに、集積された枝条の運搬効率を上げるため現地でチップ化する機械を導入したり、エネルギー利用に向けたチップの燃焼試験等を行ったりすることで、燃料としての実用性や生産手法を検証し事業化に向けて動き出している。
富山県から発信する森林資源循環モデルの可能性

使い道がなく廃棄されてきた枝条をバイオマス燃料として活用することで、森林所有者の手取り増加や広葉樹の天然更新の促進、さらには災害防止にも期待が持たれている。
富山県森林組合連合会副会長の柳原さんはこう語る。「今後も工夫しながら、林業の採算性を高めていければと思っております。」

さらに、同会会長の伊東さんも今後についてこう意気込む。「林家の皆さんも大変苦労いただいており、課題は数多くあると思いますが、山に住みたい人が(当たり前に)住めるような応援を、頑張りたいと思います。」

本プロジェクトが成功すれば、富山県のみならず、日本各地の森林地域で活用できる森林資源循環モデルとなるだろう。富山県森林組合連合会の取組みが、緑豊かな未来を創っていく。