地元資源を活かした地域活性化計画「檜原村トイビレッジ構想」

2014年、檜原村では木工・おもちゃ産業の育成と木育拠点として新たな観光・エコツーリズムを展開し、地域を活性化させることを目的とした「檜原村トイビレッジ構想」が掲げられた。檜原村の地域資源である木材を最大限活用した木工品・おもちゃ産業を推進すると共に、新たな観光施設として「檜原 森のおもちゃ美術館」を設立することで多世代交流型の木育事業を推し進める構想だ。

構想イメージの作成に携わったのは、檜原村を拠点として森林の造林・育林・素材生産を行なっている株式会社東京チェンソーズ。代表取締役の青木さんはこう話す。
「林業をしっかりやっていこうと考えると、やはり檜原村の中で付加価値を付けられるような木材産業を興していかないと中々これから厳しいということで、檜原村で木のおもちゃの産業をやっていこうということになりました。」

この構想を一枚の絵にした同社の飯塚さんは、当時を振り返ってこう話す。
「地域には木材もあるし人材も居るし休眠施設もあると。それらを生かして観光と産業の両者を盛り立てるような、そういったキーワードを拾って絵にしてみたという感じですね。子どもに関わる、つまり未来に関わる商品造りというところで、おもちゃっていうキーワードはすごくワクワクさせてくれるなと思いました。」
木材生産現場の課題、みらい基金の支援で解決目指す

近年、林業で扱われる木材は、1本の丸太から商品として利用できる真っ直ぐな部分のみを搬出し、規格に合わない曲がり材や細丸太、枝等は有効に活用されることがないまま放置されてしまうケースが多く、森林資源の有効な活用方法の確立が課題とされていた。
東京チェンソーズでは「檜原村トイビレッジ構想」と連携した木製のおもちゃ作りを通して、これまで切り捨てられていた規格に合わない木材の形を個性として活かし、丸太1本をまるごと使い切ることで木材の売上最大化、新たな価値の創造に取り組んだ。

おもちゃ作りの過程でボトルネックとなったのが、木材の乾燥や皮むきを行うための施設や作業体制の整備不足による干割れの発生やコストの増加。本プロジェクトでは、みらい基金の助成金によって強力な水圧で木の皮を剥く機械を導入し新たな加工設備を取り入れることで、課題となっていた乾燥から皮むきの工程の効率化と干割れのしにくい乾燥技術を確立し、同時にデザイン力の見直しなど複合的に改善を進めることで商品の競争力強化(ブランド化)を目指している。商品の競争力を高め商品のブランディングを行なうことで、檜原村の木材産業にも新たな流れが生まれ、木のおもちゃ作りをはじめとした今までにない素材や製品の開発につながることが期待されている。
木育活動の拠点「檜原 森のおもちゃ美術館」設立
2021年11月には、プロジェクトの柱である「檜原 森のおもちゃ美術館」がオープンした。内装・家具・おもちゃに檜原村の森林資源を最大限活用したこの美術館は、檜原版エコツーリズムの一環としての活用のみならず、子どもたちが楽しみながら木の魅力を体験できる「木育空間」としても発展し、檜原村の観光産業に新たな風を吹き込むことが期待されている。

檜原 森のおもちゃ美術館 館長の大谷さんはこう語る。
「思った以上にお客さんに来て頂けているというのが現実で、ここに来て遊んで頂くとみんな笑顔になって帰っていただけるのが良いことだなと思っています。このおもちゃ美術館や木のおもちゃを中心として、もちろん雇用の面もそうですし、林業が盛り上がっていけばいいなと思います。」
東京チェンソーズが檜原村と目指す未来

東京チェンソーズ 代表取締役の青木さんは、プロジェクトについてこう意気込む。
「檜原村トイビレッジ構想は、檜原村を産業と観光の両面で活性化していこうという取組みです。その中で一番大事なのが戦後地元の人たちが苦労して植えた森林、木をきちんと活かしていくこと。檜原村にこれだけの投資をしてもらって、人の流れもできているので、しっかりと木材を利用していく、物作りをしていくことをこれまで以上に進めていく必要がある」
「稼げる林業」を目指して始動した檜原村トイビレッジ構想。発端となった構想イメージの絵にはこんな目標が掲げられている。
「檜原村を日本一有名な木のおもちゃ村に!」
林業の課題と村の課題に産業と観光の相乗効果で取り組む新たな6次産業モデルとして、檜原村と東京チェンソーズの挑戦はこれからも続いていく。