造林事業に特化して、最適な働きかたを推進

日本では一般的な平均年収と比べて100万円ほど年収が低いとされる林業。慢性的な担い手不足、林業従事者の高齢化、そして積雪地では林業収入がなくなるため冬季の従業員雇用が難しくなるなど、越えなければいけないボトルネックは多かった。
株式会社GREEN FORESTERSは植林に専門特化してきたベンチャー企業。林業の中でもとくに人材不足が著しい造林事業に特化し、造林に最適な働き方の推進に取り組んできた。

「例えば、資材の運搬ドローンであったり、山の中でオフラインでも勤怠が登録できるようなソフトウェアを協力会社と開発したりなど、バックオフィスのところは共通化することで一人当たりの現場のメンバーの給料をしっかり上げていこうということをやっています。」と株式会社GREEN FORESTERSの代表取締役 中井照大郎さんは説明します。

村上市には伐採に適した杉は多かったものの、造林保育の人材不足から、持続的な森林管理ができない可能性があったこと、さらには積雪地ならではの問題への対処は難しいものもあった。
「やはりその積雪地で雪が降って通年雇用できないという問題っていうのが当然出てくる。ここを起点になんとかしようと思った時に設備投資もしっかり掛かりますし、設備投資をしていくまでにキャッシュフローも作らないといけない。人もしっかり採用しないといけないけど、とは言っても冬場に人を雇えない」
株式会社GREEN FORESTERSは、村上市が抱える人材不足は、これまで手掛けてきた造林に最適な働き方の推進だけでは解決しないととらえ、課題解決に乗り出します。
目指す森づくりを起点とした林業先進地への取組み

働きかたを変革してきた株式会社GREEN FORESTERSならではの発想で、造林事業を単純労働ではなく、森づくりという本質的な価値創造を念頭に置いた取組みがスタートする。
株式会社GREEN FORESTERS新潟団の施業プランナーであり、株式会社GREEN FORESTERSに村上市での事業推進を熱心に働きかけた一人でもある佐藤剛さんは、
「杉をメインで植えているんですけど、それだけではなく広葉樹も積極的に植えて、育苗も杉だけではなく広葉樹の方もチャレンジしようとしています。杉だけ植えると木材生産しか使えるところがないんですけど、僕たちはちょっとそことは重心をずらして。木材生産もやるんですけど、沢沿いには広葉樹を植えて生き物のすみかになるような、山本来の価値を高めるような森づくりをしていきたい」
と取組みに込めた思いを語ります。

そうした目指す森づくりのためには通年雇用を確保が必要となる。そのため、冬季の仕事を確立するため、木工事業にも取り組みます。
「自分たちが考えたのは林地残材の活用。大きな家を建てるような具材にはならないけれども家具や小物作りには十分利用できる素材がいっぱい落ちているので、それをしっかり使って冬場の仕事にさせてもらう」

「12月から木工品の最初のオープニングでクラウドファンディングをやるんですけど、森への応援をしてもらって、その返礼品みたいな感じでお返しするっていうモデルを自分たちは作っています。それ以外にも地元のお酒やお米とか、そういうものは森の恵みが、最終的にはそうやってできていると言い方としてはできるわけです。そうなると、そこに繋がる森ってどうなの?っていう話に当然なるわけで、僕らに対して応援してもらった分には基本的に5年間ぐらいはかなり詳細なデータをお出ししていきます」
と株式会社GREEN FORESTERSの佐藤さんは続けます。
生き物と共存する森づくりのために、林業スケジュールを調整

目指す森づくりの具体的な取組みの一つが、木材利用のためだけでなく、生き物の棲みかとしても人工林が機能し、ヒトと生物が相互に補強し合う森づくりを行うこと。
「新潟県でも準絶滅危惧種と言われていている『ヨタカ』という鳥は、実は伐採跡地に巣を作るんですよ。4月ぐらいに飛来して7月〜8月ぐらいまでに巣を作って卵を産んで、子どもを育ててそれで巣立っていく。あえて「ヨタカ」に合わせた林業スケジュールを作って「ヨタカ」がいつでも来てくれて巣作りしてくれてもいいような感じに揃えておく、というような森づくりをやったりとか。本当はいなければいけない生き物が生きられる環境っていうのを作らなきゃいけないんじゃないかなって思ってたんです。」と佐藤さんは語ります。

こうした取り組みを理解し、サポートしているのが、生物・生態学の研究者である片野晃輔さん。

「事業として成立させるための林業と学術的に求められるこれからの林業みたいなところは、まだまだ乖離が大きくあると思っています。いわゆる環境保全の考え方、生物多様性を上げていきましょうという話とこれまでの人工林の作り方は全く目的とするところが違ってきています。生態系には価値があるということは昔から、1960年代とかからだんだん言われ始めてきた議論で、カーボンオフセットでクレジットとして我々がなかなか環境に対価を払えていなかった。」

片野さんはこうした現状に対して、株式会社GREEN FORESTERSの取組みを高く評価しています。
「今まで取るばっかりだったんだけど、GREEN FORESTERSさんは、それだと循環していかないよねっていう、生態系からいろんな利益を我々受けているよね、どんな切り口があるか、と常に考え続けている会社なわけなんですけど、その中の1つとして木工という物を売っていくのがあるのかなと思っています。」

「GREEN FORESTERSさんも現場の人たちの負担をできるだけ少なくして、生き物の棲みかを用意してあげる方法はないかっていうことに対して、折り合いをつけるポイントを常にバランス良く見つけようとしている感覚があって、降雪地域でこういう取り組みをやっていくということは降雪地帯じゃない地域にとっても、そして、今までこういう形でプロダクトリリースしてこなかったなっていう人たちにとっても、こういう切り口ならできそうというある意味取っ掛かりとしてすごく参考になるプロジェクトだと思います」
生き物と共存する森づくりから出した答えから、林業ビジネスへの飽くなき変革へ

株式会社GREEN FORESTERSの中井さんは、このプロジェクトの未来をこのように語ります。
「一次産業の役割として自然を守ったり管理したりということをやっていないと、自然がどんどん痛んでいってしまう。自然と接する人間だからこそ感じていて、みらい基金があったからこそ積雪地でも1個答えができた。林業という仕事で生きている僕ら造林や植林している人たちがこの陸や山の自然資本を管理するということでお金をもらうビジネスモデルに変えていくのが最終目標なので、この林業という仕事を少し変容させていくことができるといいなと思っています」