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林業

三重発、スマート林業への挑戦。

中勢森林組合

中勢森林組合の動画(2023年1月撮影)

ICTを活用したスマート林業"三重モデル"の構築を目指す

豊かな自然にあふれた三重県津市は、その総面積の半分以上が森林組合の整備対象エリアとなっている。管轄する中勢森林組合は、航空レーザー計測を導入して境界明確化や森林資源調査を行うなど、これまでも林業のデジタル化を進めてきた。本プロジェクトではこのデジタル化の流れをさらに強化し、木材の生産現場から流通工程の全域にわたって効率化と省力化を図り、スマート林業"三重モデル"を実現させるための実効性のある事業システムの構築を目指す。さらにこの活動を通して、後継者問題を抱える林業界に若い世代の新規従事者を呼び込むとともに、ICTを活用した林業活性化を推進するモデルとして全国的な普及につながるように取り組んでいく。

助成対象事業の
評価ポイント

中勢森林組合は、三重県津市の森林全域を管轄する組合です。本プロジェクトは、林業のデジタル化をさらに推し進め、現在の林業の川上・川中・川下の各工程における「小さな無駄の蓄積」を可視化して削減する取組みです。川上においては、現場の進捗状況をリアルタイムに可視化するためのシステムを構築。川中では中核的な中間土場に木材の入出荷・運搬・交渉機能を集約化・可視化し、A材・B材を選り分けながら木材に応じた納品を行い、将来的には他組合も巻き込んだ流通の効率化を推進。その結果として川下での原木の安定供給を図ります。本プロジェクトにより「小さな無駄の蓄積」が解消され、新たなバリューチェーン構築や森林所有者である山元への利益還元につながることが期待されるので、当基金から後押しを行っています。

地域の豊かな森を次世代に引き継いでいくためにプロジェクトがスタート

地域の豊かな森を次世代に引き継いでいくためにプロジェクトがスタート イメージ

中勢森林組合は、三重県津市の森林全域を管轄する組合。その整備対象エリアは約46,200haと、津市の総面積の57%を占める。この緑豊かな土地で、間伐や下刈り、植林などの整備作業を通して森林保全と地域材の利用拡大に向けた活動に取り組んでいる。

地域の豊かな森を次世代に引き継いでいくためにプロジェクトがスタート イメージ

しかしながら、国内林業の低迷に伴う後継者不足や従事者の高齢化といった問題はこの地域にも存在する。中勢森林組合 理事参事の山崎さんはこう話す。
「今の若い方のほとんどは、山に関心がありません。ただ、それを放っておくと山はどんどん悪くなる。少しでも良い形で次世代に引き継ぐためにはどうすればいいか、考える必要がありました」

木材の生産現場から流通工程までトータルにデジタル化するICTの導入へ

木材の生産現場から流通工程までトータルにデジタル化するICTの導入へ イメージ

そこで取り組んだのは、ICTを活用した業務の効率化と省力化だ。林業のデジタル化について、同組合 生産課課長の松浦さんはこう語る。
「これまでは航空レーザーによる調査・解析を行っているだけで、ICT化といえる取組みはほとんどありませんでした。これを、森林資源調査工程から木材生産工程、木材流通工程まですべてのプロセスを通してデジタル化を図る必要があると考えたのです」

木材の生産現場から流通工程までトータルにデジタル化するICTの導入へ イメージ

「例えば、流通の際の木材集積場である中間土場は、それぞれの組合が各々で設けていて一元管理されていないのが実状です。このような工程上の無駄を省くためにも、デジタル化によって情報を集約することは非常に重要だと考えています」と松浦さん。

木材の生産現場から流通工程までトータルにデジタル化するICTの導入へ イメージ

林業には工程として、川上・川中・川下の3つの段階がある。今回のプロジェクトでは、川上では航空レーザー計測によって境界の明確化や森林資源情報の蓄積を効率的に行う。川中では、デジタル仮想土場に各森林組合の入出荷情報を集めて供給元に提供し、流通のスムーズ化や需給情報の把握を図る。こうした取組みの結果、木材の安定供給を川下で実現する。このような円滑な事業の流れをデジタル化によって実現しようというわけだ。

木材の生産現場から流通工程までトータルにデジタル化するICTの導入へ イメージ

「川上から川下まで一本につなげたライン、いわゆるサプライチェーンの構築に取り組むモデルとして、今回のプロジェクトであるスマート林業"三重モデル"を実現できればと考えています」
同組合 課長補佐の井上さんは、プロジェクトの目指すべき方向を力強く語る。

タブレットによる情報共有で複雑な現場業務の効率化と省力化を進める

タブレットによる情報共有で複雑な現場業務の効率化と省力化を進める イメージ

スマート林業への取組みは、着実に現実化へのステップを歩んでいる。プロジェクトに参画するアジア航測株式会社の北林さんはこう語る。
「今回のデジタル化は、弊社が行なっている航空レーザー計測による森林資源解析から始まり、今後どのように使っていくかを中勢森林組合さんと一緒に話し合いながら進めています」

タブレットによる情報共有で複雑な現場業務の効率化と省力化を進める イメージ

現在、日々の業務に導入されているのが、木材生産工程の現場をサポートする各種アプリだ。
「『日報管理システム』は、もともと毎日の日報を紙で書いていたものをタブレットで入力することで一元管理できるようにしたものです。業務の進捗などが、いつでもどこでもすぐにチェックできるようになりました。また『現場管理システム』は、自分がどこにいるのかといった位置情報を現場で素早く確認できます。さらに航空レーザー計測のデータが入っているので、周辺の地形や森林資源の調査情報などもひと目でわかるようになっています」と北林さんは説明する。

タブレットによる情報共有で複雑な現場業務の効率化と省力化を進める イメージ

今回のプロジェクトは、林業のデジタル化を推進する"三重モデル"として独自のシステム構築を目指している。
「中勢森林組合さんからは、まず三重県でこのシステムを広めていきたいという強い要望を受けています。県内の他の組合さんとも同じような取組みができればと考えています」と、北林さんはプロジェクトのさらなる進展を見すえながら、そう語る。

自治体との連携によって官民一体でプロジェクトの実現に向かう

自治体との連携によって官民一体でプロジェクトの実現に向かう イメージ

スマート林業"三重モデル"の構築。地元林業の活性化にかける中勢森林組合の想いは、自治体にもしっかり届いている。令和3年には県の組織として、三重県スマート林業推進班が新設された。三重県農林水産部の伊川さんは、その経緯をこう語る。
「三重県の林業が抱えている問題に対し、スマート化がその課題解決のひとつになるという中勢森林組合さんの取組みは、とても素晴らしいものだと感じました。これは三重県としても、互いに情報共有しながら協力できるところは積極的に支援させていただこうと考えています。伊勢神宮や松坂牛といった観光のイメージが強い三重県ですが、林業も盛んだということをもっと全国の皆さんに知っていただきたいと思っています」

スマート林業"三重モデル"を全国に発信し、国内林業を再び盛り上げたい

スマート林業

林業界にかつての勢いを取り戻したいという想いで始まったプロジェクト、スマート林業"三重モデル"。この取組みの未来を、中勢森林組合 理事参事の山崎さんはこう語る。
「現在、みらい基金さんのサポートによってICT化を進めていますが、まずはスマート林業の構築に向けた具体的なシステムやノウハウを蓄積していきたいという思いがあります。そしてこの活動を三重県の中でしっかりと波及させ、近い将来には中部圏内、最終的には三重県から全国へと、このICT化の取組みを発信していきたいと思います。これによって国内の林業が少しでも元気になればうれしいですね」
世界有数の森林大国、日本。国内林業の活性化に貢献するため、スマート林業"三重モデル"はさらなる発展を目指し、進み続ける。

助成先の組織概要

中勢森林組合

三重県最大の木材生産量を誇る森林組合。境界明確化や資源量調査といった林業のデジタル化に積極的に着手している。これまでも搬出作業は直営の班ごとに伐倒から運搬まですべての工程を行うなど、無駄を省き効率的な業務を展開している。

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