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水産業

未来へ繋ぐ、日本一の閖上赤貝。

閖上赤貝組合

閖上赤貝組合の動画(2021年6月撮影)

閖上赤貝のブランド力を再生し、持続可能な漁業モデルの構築を目指す

高級赤貝の産地として全国的に知名度の高い宮城県名取市閖上地区。しかしながら、過去には乱獲や地球温暖化の影響による赤貝の漁獲量減少に東日本大震災の被害が重なり、赤貝漁業継続の危機にも陥った。味・香り・身色の鮮やかさ等で高い評価を得てきた閖上赤貝のブランド力を守り赤貝漁業を持続可能な形で継続するため、閖上赤貝組合では地域や大学と連携し、様々な施策に取り組んだ。本事業では最新技術を活用し、貝を開けずに身色を判別するシステムを構築。あわせて、種苗生産システムを導入し、赤貝漁師自ら種苗の生産・放流を実施する新たな生産システムの確立に取り組んだ。閖上赤貝という地域資源のブランド力向上に加え、地域漁業の持続可能性を高める資源循環型漁業モデルの構築を目指す。

助成対象事業の
評価ポイント

当組合は、赤貝の産地として有名な宮城県閖上地区の赤貝漁師12名による任意組織で、過去の乱獲や東日本大震災による資源量減少等の影響を受けながらも、様々な改良策を通じて閖上赤貝の品質維持や資源管理を行ってきました。しかし近年、閖上赤貝の漁獲量減少や身色悪化等の問題が浮上していました。このプロジェクトは、それらの問題に対し、地元の大学等と連携し近赤外線や画像解析を活用して貝を開けずに身色等を判別する技術を確立し、身色が悪いと判別された赤貝は海に戻して品質の回復を図る取組みです。あわせて、漁業者自らが資源生産・管理・保護を行う簡便な種苗生産システムを導入し、新たな漁業モデルの確立に取り組みます。閖上赤貝という地域資源のブランド力の維持・向上に加え、資源量の維持・拡大を通じて地域漁業の持続可能性を高めることが期待されましたので、当基金から後押しを行っています。

日本屈指の赤貝の名産地、失われゆくブランド力

日本屈指の赤貝の名産地、失われゆくブランド力 イメージ

奥羽山脈や阿武隈山地からの栄養素が注がれる閖上沖では、その恵まれた漁場環境を活かし古くから赤貝漁が地域の生業として営まれている。閖上漁港で水揚げされる赤貝は、色・艶・味・香り全てにおいて高く評価され、東京都中央卸売市場では日本一の高値で取引される程のブランド力を誇っていた。

しかしながら、近年はブランドを脅かす課題が後を絶たなかった。赤貝を出荷する際の等級分類の基準未整備による品質・取引価格のバラつきや、一部の漁業者による未熟な赤貝の水揚げや粗悪品出荷の横行等が原因で、閖上赤貝のブランド力が低迷。重ねて、乱獲や地球温暖化の影響で赤貝の漁獲量減少が進み、漁業者の収入低迷や水産加工業の衰退も深刻化していた。閖上地区は2011年の東日本大震災でも甚大な被害を受け、産業基盤やコミュニティの崩壊、地震・津波の影響で海中環境が変化したことによる赤貝の品質変化等にも長年悩まされた。さらに、2017年頃からは原因不明の赤貝の品質悪化が発生、身色の悪い赤貝の返品が相次ぎ、厳しい状況が続いた。

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閖上赤貝のブランド再生に向けた取組みをスタート

閖上赤貝組合ではこれらの課題を解決するため、2010年から宮城大学、名取市水産問題対策協議会の産学官と連携し、閖上赤貝のブランド再生に向けたプロジェクトを始動。生産量の安定化を目的とした漁具の改良を始め、禁漁区域等を定めた新たなルールの策定や重量分別機導入による出荷基準の統一等、品質の維持や資源管理の取組みを行っていた。各取組みにおいて、一定の成果は上がっていたものの、赤貝の身色悪化の問題は調理者が貝を開くまで確認できないため、抜本的な解決には繋げられていなかった。

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地域と連携、最新技術で赤貝漁業に革新を

当組合の出雲組合長はこう振り返る。「身色が悪いと問屋さんあたりからクレームが入る。色の悪いやつをどうにか殻を開けなくてもいいように見分けできないの?っていうことで西川先生に相談して。」――そこで、本事業で取り組んだのは、閖上赤貝の高品質管理システムの構築。近赤外線センサーや画像解析を活用することで、貝を開かずに身色等を識別する技術の開発に取り組んでいる。

地域と連携、最新技術で赤貝漁業に革新を イメージ

さらに既存の重量分別装置と掛け合わせることで、身色が悪い・身が小さい等の不良赤貝を自動で選別できるシステムの構築を目指す。宮城大学の西川教授は「出荷する前に色を見分けて、悪いものをはじいて良いものだけを出せばもっとブランド力が上がるという話をして、その会話がヒントになった」と話す。

地域と連携、最新技術で赤貝漁業に革新を イメージ

最新技術を活用し水揚げから等級規格分別までの自動化が実現できれば、漁業者の負担を軽減できるだけでなく、基準をクリアした閖上赤貝のみ出荷される仕組みができることでより高い品質が保証され、ブランド力回復・収益向上の契機にもなる。さらに、不良赤貝として識別されたものは再び海に戻し、身色が回復するまで成育させてから捕獲することができれば、海洋資源の保護にも繋がることが期待される。

地域と連携、最新技術で赤貝漁業に革新を イメージ

さらに今後は、簡便な人工種苗生産技術の開発を行い、赤貝漁師自ら種苗の生産や放流を行う生産システム確立させることで、閖上赤貝の資源維持や漁獲量向上による安定した収入確保と漁業者自らが海洋資源の生産・管理・保護を行う持続性の高い漁業モデルの構築を目指す。

世界に通用する持続可能な漁業モデルを閖上から

世界に通用する持続可能な漁業モデルを閖上から イメージ

閖上赤貝組合が見据える未来。それは、ここ閖上の海から水揚げされる肉厚で色鮮やかな日本一の赤貝を全国に届けること。そして、その豊かな海の恵を継続的にそして地域と密着しながら繋いでいくこと。西川教授は「閖上でこういった水産業のモデルづくりができれば、それを宮城県、あるいは東北地方、それから世界各国にそういうモデルを発展させていきたいと思っています。」と話す。多方面でサステナビリティの重要性が叫ばれる昨今、閖上で構築された漁業モデルが日本全国、世界各国に広がっていくのかもしれない。

助成先の組織概要

閖上赤貝組合

宮城県名取市閖上地区の赤貝漁師12名による任意組織。過去の乱獲等による資源量減少の影響を受けながらも、漁獲ルールの導入、漁具の改良、重量分別機導入による出荷基準の統一等を通じて、閖上赤貝の品質の維持や資源管理に取り組んでいる。閖上赤貝という地域資源のブランド力の維持・向上に加え、資源量の維持・拡大を通じて、地域漁業の持続可能性を高めることを目指している。

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