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水産業

獲れた魚を活かす。街がもっと活きる。

魚津漁業協同組合

魚津漁業協同組合の動画(2019年9月撮影)

富山湾の恵みを地域の力で最大限に活かし、持続可能な水産業をつくる

水産資源が豊かな富山湾に面し、水産業が盛んな富山県魚津市も、漁業者の高齢化と担い手不足、水揚げの減少などの課題を抱えている。周辺の水産加工会社も苦しい経営を強いられている状況だ。そこで、富山県東部に位置する呉東地区の漁協や水産加工会社、行政、大学などが連携し、水産業再生プロジェクトをスタートさせた。みらい基金の助成金で強化された水産加工能力を基盤とし、新鮮な魚介類を無駄なく、付加価値をつけて全国に流通させる。新商品開発や国際基準の衛生管理の確立など、新しい挑戦を重ねて「持続可能な水産業」の実現を目指す。

助成対象事業の
評価ポイント

当組合は複数の地元加工会社とともに、有限責任事業組合「JF富山フーズネットワーク」を設立し、加工事業を通じた地元魚の需要創出による魚価の安定に取り組んできました。このプロジェクトは、これまでの取組みをさらに進めるため、地元の複数の漁協や加工会社とともに広域的なコンソーシアムを立ち上げ、原料調達・加工・販路開拓の役割分担を行いつつ、加工事業の分業化を図る取組みです。当組合が核となって、原料の安定調達や加工会社の品質・衛生管理レベルの向上を支援し、連携基盤を構築しています。その結果、連携による高レベルな衛生管理のもとでの高付加価値商品の生産体制を構築することで、持続的な漁業の確立と地域水産業の活性化に貢献することが期待されましたので、当基金から後押しを行っています。

古くから魚で栄えてきた街が今、漁業不振で苦境に立たされている

古くから魚で栄えてきた街が今、漁業不振で苦境に立たされている イメージ

「天然のいけす」と呼ばれる富山湾に面した地域では、古くから水産業が盛んであった。なかでも魚津市は、名前の表す通り良質な魚介類が豊富にあり、水産業を基盤として発展してきた。市内にある魚津漁業協同組合は、富山県内でも屈指の水揚げがあり、特にホタルイカの産地として有名だ。大型定置網漁を中心として、蟹かご漁、バイかご漁など、さまざまな漁が営まれている。

しかしながら、漁業者の高齢化や担い手不足、水揚量の減少などの問題がこの地域にもある。当組合の油本組合長は「組合の経営を維持することが大変難しくなってきています。ただ魚を販売しているだけでは不十分であるため、魚津の魚の付加価値を上げるためにさまざまな取り組みを行ってきました」と話す。

古くから魚で栄えてきた街が今、漁業不振で苦境に立たされている イメージ

例えば、HACCP(食品の衛生管理の方式。Hazard Analysis Critical Control Pointの略)に対応する高度衛生管理型市場「魚津おさかなランド」は、全国の先駆けとして注目された。地域の水産加工の基盤強化を目的として、漁協が自ら加工に取り組むJF富山フーズネットワークも、ホタルイカやふくらぎといった魚介類の価格安定に寄与している。

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魚津ブランドのPRも積極的だ。小さな棘のような鱗が他の魚を傷つけるため、厄介者扱いされていたウマヅラハギを、富山湾の冬の味「魚津寒ハギ・如月王」としてブランド化した。バイ貝を炊き込んだ漁師飯「バイ飯」も、魚津の新名物として打ち出している。

あの手この手で地域の水産業を活気づけようとしているものの、依然として苦しい状況が続いている。魚津名物のホタルイカの素干しなどを販売している浜浦水産の浜浦社長は「今年の春は、ホタルイカの水揚げが例年の四分の一しかありませんでした。また冬のカワハギも少なく、大変厳しい1年でしたね。仕入れられるときにたくさん買い付けをして冷凍保存して対応しているものの、見通しを立てづらい状況が続いています」と話す。原料不足は地域の水産加工会社に共通する問題であり、廃業を選択するところも少なくない。

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地域の水産加工能力を強化し、水産業再生に向けた広域連携をスタート

当組合の浜住専務は「この苦境を個の力で打開するのは難しいですが、地域の力を結集すれば、突破口が見つかるかもしれません」と話す。呉東地区の8つの漁協や水産加工会社などが連携し、持続可能な水産業の確立を目指すプロジェクトがスタートした。

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呉東地区の広域連携の起点となるのは、JF富山フーズネットワークと地域の水産加工会社の水産加工能力である。「JF富山フーズネットワークの立ち上げから10年がたち、工場が手狭になり、設備の見直しが必要となっています。さらに、地域の水産加工会社の衛生管理基準を上げたり、それぞれの得意分野を持ち寄って分業化を進めるための、"もう一押し"を求めてみらい基金に応募しました」と油本組合長は話す。

具体的には、みらい基金の助成金でJF富山フーズネットワークの工場を増築し、大量の魚介類をベルトコンベアの上で連続的に急速冷凍するトンネルフリーザーを導入。これにより、ワンフローズンを実現し製品の鮮度が高まり、加工から冷凍、梱包までの一連の作業も半自動化されるため、生産効率が大幅に向上する。

水産加工会社のHACCP導入研修および指導も当組合が中心となって行う。水産加工会社の衛生管理担当者を集めて、定期的に研修会を開催すると共に現地指導も実施。高い衛生基準を満たすことは、販路拡大にもつながる。例えば、JF富山フーズネットワークは、食品安全管理の国際規格FSSC22000を取得済みである。富山湾の新鮮な魚介を扱っており、しかも国際基準の食品安全衛生管理を実現しているということで、フードサービス業界からの引き合いが増えている。

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現在も産直食材の宅配を行う生活協同組合パルシステムと商品開発を実施したり、大手回転寿司チェーンに富山湾のホタルイカを販売したりと、販路拡大を進めているところだ。今後は、全国展開しているコンビニエンスストアとの連携も目指す。

地域の水産加工会社の得意分野を活かした分業も進んでいる。前述の浜浦水産は、魚津漁業協同組合から送られてきた魚の頭をカットし、内臓を処理する一次加工を行い、加工が済んだものをJF富山フーズネットワークに送っている。こうした分業体制を確立することで、生産能力拡大とコスト削減を両立させるのが狙いだ。

地域の水産加工能力を強化し、水産業再生に向けた広域連携をスタート イメージ

当組合の購買FM事業部、田切次長は「持続可能な水産業の確立のため、これまで水産資源の有効活用と国際認証の取得を行ってきました。国内はもちろん、海外への展開も検討しています」と話す。

現状維持は衰退と同じ...地域を元気にするための挑戦は続く

富山短期大学や栄養士とのコラボレーションによる新商品の開発も進んでいる。「先日も大学の先生に来ていただいて、サンマをつかった調理体験イベントを開催したところです」と浜住専務。県内唯一の水族館である魚津水族館に隣接した施設の一角に「魚津丸キッチン」をオープン。水族館と連携することで魚を鑑賞するだけでなく、魚のおいしさを伝えていく場所としても打ち出していく。「魚津丸キッチン」は富山短期大学などと、新商品を開発するためのテストキッチン・アンテナショップの役割もある。

持続可能な水産業の実現に向けた連携は、じわりじわりと広がっている。「戦後間もないころは、魚津から大船団を率いて漁に出ていました。若い人もたくさん乗り込んでいましてね、魚津の街も漁業の盛り上がりとともに発展してだんだんと大きくなりました。それと同じようにはいかないかもしれませんが、また魚津の街を元気にしたいですね」と油本組合長は話す。再び漁業が元気になれば、漁業者を志す若者も増えるかもしない。

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「これまでやっていたことを繰り返すだけでは、停滞どころか衰退に向かっていくと思います。これを打破するためには、新しいことを新しい視点でし続けなくてはならないんです」と浜住専務が語るように、このプロジェクトは地域衰退の危機感に突き動かされている部分も大いにある。「地域の水産業を何とかしたい」という想いは、水産業に関わる人、地域再生を願う人の共通のものだろう。呉東地区で新しい挑戦を続けて、持続可能な水産業を確立することができれば、漁業の不振で苦境に立たされている地域のモデルケースにもなるかもしれない。

助成先の組織概要

魚津漁業協同組合

富山県呉東地区の漁協や水産加工会社と立ち上げたコンソーシアムにおいて、中核的な役割を担う組合。「水産資源の宝庫」と言われる富山湾で、ホタルイカをはじめ、「富山湾の宝石」と呼ばれるシロエビやフクラギ、ウマヅラハギ、ベニズワイガニ、バイ貝など多種多様な魚介類を水揚げしている。新鮮な魚介類をより安全に安心して食べてもらうため、2004年にHACCPに対応する高度衛生管理型市場「魚津おさかなランド」を設立。仲買人の目利きを経て、魚津市内はもとより、富山県内外へと出荷されている。

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