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農業

アグリバレーが、地方の未来を変える。

株式会社さかうえ

株式会社さかうえの動画(2022年11月撮影)

地方の未利用地を活用して、新たな畜産ビジネスと人材育成に挑む

農家の高齢化や過疎化から生じる、耕作放棄による未利用地の増加と荒廃。さらに地方の暮らしを支える地場産業の衰退。これらは日本の多くの地方が抱える問題だ。これに対し、未利用地を肉牛の放牧地として活用し、大学と連携して先端技術を導入することで、良質な黒毛和牛を効率的に育成する畜産ビジネスの構築に取り組んでいるのが、株式会社さかうえだ。このプロジェクトでは、耕作放棄地の有効利用とともに、未来型ビジネスモデルを実現することで、新たに農業を志す人材の育成にも積極的に取り組む。これらの活動を通して地域の活性化を図るともに、日本全国の過疎地や中山間地域での復興モデルとしての波及を目指している。

助成対象事業の
評価ポイント

株式会社さかうえは、ピーマンなどの野菜や牧草飼料の生産を行っている農業法人です。本プロジェクトは、耕作放棄地を肉牛の放牧地として活用すべく、低コストで黒毛和牛を育成する畜産ビジネスモデルを構築するとともに、ピーマン栽培と同様に社内で人材を育成することで、モデルの横展開も図る取り組みです。放牧は、牛舎での肥育と比較して、肥育の効率がよくないこと、細かな生産性の管理がしづらいことが課題です。本プロジェクトでは、大学と連携し、胎児期や新生児期の栄養管理により体質を制御する「代謝プログラミング」を施すことで、肉質・肉量の向上を図るほか、IoTを活用した飼養管理の効率化を図ります。本プロジェクトを通じ、低コストでの肥育牛の放牧がビジネスベースで確立されれば、他地域に波及する可能性が認められるほか、当社のこれまでの人材育成の実績を踏まえると、世代を超えた波及可能性も認められるので、当基金から後押しを行っています。

新しい仕組みをつくることで、農業を志す若者を積極的に受け入れていく

新しい仕組みをつくることで、農業を志す若者を積極的に受け入れていく イメージ

地方には現在、過疎化などによって耕作放棄地といった未利用農地が急速に増加している。この状況をふまえ、未利用の土地を牛の放牧地として活用し、最新の技術知見によって新たな畜産ビジネスの形成に取り組んでいるのが、株式会社さかうえだ。

新しい仕組みをつくることで、農業を志す若者を積極的に受け入れていく イメージ

代表取締役の坂上隆さんは、この試みが始まった経緯をこう語る。
「私たちは鹿児島県の志布志市で、露地野菜や施設野菜の栽培、黒毛和牛の生産と肉の販売を行っています。昨今、農地を借りてほしいという依頼が多くなりました。でもそこは耕作するには不便な場所だったりするのです。ならばと、牛の放牧地として活用することを考えました。そしてこの場所で育った牛を『里山牛』と呼び、広く知ってもらえるようにしたのです」

新しい仕組みをつくることで、農業を志す若者を積極的に受け入れていく イメージ

さらに、農業に興味がある若者を積極的に受け入れるため、『アグリバレー』という構想も掲げた。
「ITのシリコンバレーのように、農業に想いのある人たちが集まる仕組みができればと思ったのです。農業がしたくても、土地を持ってなかったり、経験がなかったりするとなかなか踏み込めない。そこで新しい仕組みをつくることで、参入障壁を下げて若い人が入りやすいようにする。それがアグリバレー構想の狙いです」と坂上さんは説明する。

最新のIoTを活用し、牛の管理をリモートで行う仕組みを構築する

最新のIoTを活用し、牛の管理をリモートで行う仕組みを構築する イメージ

このプロジェクトは地元の鹿児島大学も参画し、産学連携によって進められている。鹿児島大学農学部教授の後藤貴文さんは、この取り組みについてこう語る。
「畜産は生き物を飼うわけで、いったん始めると一年中そこから離れられない。若者が積極的に就いてくれる職業ではないのです。そこで、IoTを活用した農業モデルの構築を進めています」

最新のIoTを活用し、牛の管理をリモートで行う仕組みを構築する イメージ

具体的な施策のひとつが、餌やりを遠隔で行う仕組みづくりだ。まず音が鳴ると餌がもらえることを牛に学習させ、給餌場にスピーカーを置く。さらに一頭ずつ均等に餌を与えるため、スタンチョンという牛の首を固定する機器を設置する。そしてWEBカメラ、サウンドシステム、自動給餌機、ロック機構付きスタンチョンをIoTで連動させ、リモートで運用できるようにするのだ。

最新のIoTを活用し、牛の管理をリモートで行う仕組みを構築する イメージ

「こういう仕組みをつくることで、現地にいなくてもスマートフォンで管理できるようになります。将来的には、きつい・汚い・危険・稼げないというような4K要素を解消し、若い人にも魅力的な職業と思えるようにしたいと考えています」と後藤さんは話す。

未経験で農業の世界へ、スマート農業は若い人こそ柔軟に対応できる

未経験で農業の世界へ、スマート農業は若い人こそ柔軟に対応できる イメージ

こせど農園の代表の小瀬戸太一さんは、このアグリバレー構想のもと、株式会社さかうえに入社し、独立した若手の一人だ。
「自分は、家庭菜園もほとんどしたことのない農業未経験者でした。さかうえに入ってよかったのは、ピーマン栽培やハウス栽培といった部門別に損益計画書をつくり、予定と実績を組みながら進めるというやり方をしていたこと。基本的な経営意識が自然に身についたと思います。独立したとき、5年、10年の計画を立てるのにすごく役に立ちました」

未経験で農業の世界へ、スマート農業は若い人こそ柔軟に対応できる イメージ

「今はピーマンをつくっていて、知り合いのところにも届けたりしています。楽しみにしている人もいるので、そういうのはうれしいです。今後は農業をやってみたいという若い人を入れたいですね。若い人のほうがスマート農業に対して柔軟だし、やっていて活気が出るし、自分も勉強になると思うんです」と、小瀬戸さんは将来に思いをはせる。

こうやったらできるんだ、ということを見える成功事例のひとつに

こうやったらできるんだ、ということを見える成功事例のひとつに イメージ

アグリバレー構想のこれからを、株式会社さかうえ 代表取締役の坂上さんはこう話す。
「私たちは牛の放牧だけでなく、精肉から販売までトータルに行う畜産ビジネスを目指しています。実現するまでにはかなり時間がかかると自覚していましたが、みらい基金さんの『将来性のある事業を早く世に出す』という考え方で力をもらうことができました。今は就農人口が減っている状態なので、とにかく農業がしたいという想いのある人が参入しやすくすること。それが非常に大事だと思います。その支援をアグリバレーでできたらいいなと考えています」

こうやったらできるんだ、ということを見える成功事例のひとつに イメージ

さらに坂上さんは、日本全国の地方活性化にもこの取り組みは貢献できると考えている。
「こうやったらできるんだ、ということが見えると、他の人もやれると思うんです。まずは私たちが、こうやったらできるという成功事例のひとつになる。これが第一段階だと思います。次にそれが広がっていけば、地方はもっと元気になるはずです」
鹿児島の小さな山間の町で生まれた、アグリバレー構想。農業の仕組みを新しくしていく仕組みが、この国の地方の未来を変えていくかもしれない。

助成先の組織概要

株式会社さかうえ

ピーマンなどの野菜や牧草飼料の生産を行っている農業法人。ピーマン栽培で独自のビジネスモデルを構築し、就農を希望する人材を社内育成・独立支援してきた実績がある。農産物の生産においてハードルの高い「質・量・時の約束」を可能な限り実現し、食品メーカーなど多くの取引先に対して契約栽培形態での農産物供給を行っている。

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