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農業

新たな食の発信を、十勝から。

十勝グランナッツ合同会社

十勝グランナッツ合同会社の動画(2021年9月撮影)

十勝の大地から新たな食の可能性を発信

広大な耕地と大型農業機械を駆使して「大規模生産型農業」が営まれる北海道、十勝。これまで十勝では、じゃがいも、甜菜、小麦、豆類の4作物を中心とした輪作が行われていたが、食品加工率の低下や圃場の連作障害等の問題が発生。解決の糸口として注目されたのが、近年健康食材としても注目度の高い落花生の生産だ。本プロジェクトでは十勝地域での新たな輪作作物として落花生を定着させるため、地元大学等と協力した栽培方法の確立や収穫から出荷までの効率化を目指したシステムの構築、さらには落花生を通じた地域の経済振興、雇用創出やブランド化を目指した取組みを行う。農地の安定的な活用と機械化による効率的な生産作業を実現し、品質と安全性を保った地域のブランド製品を創出することで、農業地域の振興モデルとして波及することを目指す。

助成対象事業の
評価ポイント

当社は、十勝地域において落花生産地化に取り組む「十勝グランナッツプロジェクト」のなかでプロジェクトメンバーの出資により設立された加工・販売会社です。十勝地域では、小麦・甜菜・豆・馬鈴薯の4品目の輪作による大規模生産が行われていますが、元来食品加工率が低く、近年では連作障害等の課題があります。落花生は、日本ではテーブルナッツとしての用途が一般的ですが、海外ではピーナッツバターやオイルとして活用されており、加工用途に伸びしろのある作物です。しかしながら、生産者の高齢化等により国内主要産地での生産量は減少傾向であり、わが国の自給率は10%程度にとどまっています。本プロジェクトでは、連作障害が発生し始めている当地域において、高換金性作物である落花生を新たに輪作作物として導入することで、連作障害軽減を含めた生産者の所得向上に繋げるとともに、新たな産地形成による自給率の向上を目指しています。本プロジェクトにより、落花生収穫後に人力で行っている洗浄・乾燥・選別作業について、機械化を行い当社が一括して管理することで、生産者の労力削減と落花生の生産規模拡大を図るとともに、品質の斉一化によるブランド力強化にも繋がることが期待されましたので、当基金から後押しを行っています。

日本最大の食料生産基地 十勝の抱える課題

日本最大の食料生産基地 十勝の抱える課題 イメージ

日本有数の農業地帯である十勝地域では長年、じゃがいも、甜菜、小麦、豆類の4種の作物を基幹とした輪作による大規模栽培が行われてきた。しかしながら近年は、同一の圃場で同一の作物を繰り返し栽培することにより、土の中の栄養分が不足したり作物に有害な病原菌の密度が高くなったりする等の連作障害が問題となっていた。
さらにEPAやFTAの発行に伴う市場のグローバル化により、国産作物と輸入作物との価格競合が生じており、十勝の輪作作物の市場価値が下がり栽培の規模が縮小することも懸念されている。農家からは、従来の作物に加え、換金性が高い新たな作物を輪作体系に導入することを求める声も上がっていた。

落花生が持つ可能性

これらの問題解決を目指し、十勝地域で栽培する新たな作物として注目したのが「落花生」。十勝グランナッツ合同会社の田中さんはこう語る。「落花生は根粒菌をたくさん持ちますので土壌改良、土壌の栄養分を増やすという1つの特色があります。また、輸入量・消費量が伸びている一方で、生産量が減少傾向にある。だからこそ、この十勝の農業に活かしていきたい。」

落花生が持つ可能性 イメージ

落花生は熱帯地域から亜寒帯にいたる世界各地で栽培され、テーブルナッツとしてだけでなく、ピーナッツバターや菓子原料、食用オイルなど様々な用途での活用が期待できる。さらに近年は、たんぱく質やビタミン類などの栄養素が豊富に含まれた機能性栄養食品としても関心を集めており、全世界での生産量は25年間で2倍近くまで増加している。
日本国内でも落花生の年間消費量は約9万トンに上るが、国内生産量は長年減少傾向が続いており、2016年時点での落花生の自給率は約10%と極めて低い水準だ(一般社団法人 全国落花生協会によると2020年時点でも約9%と極めて低い水準)。国内の90%の落花生を生産する千葉県と茨城県の両県においても、就労者の高齢化や生産コストの高騰により栽培を継続できない農家が増加し生産量が激減している。国産落花生の安定的な供給を維持するためにも千葉県や茨城県に続く新たな地域での生産の必要性が叫ばれる中、十勝地域は地元農家の農業機械の所有率が高く圃場の整備能力に長けているほか、これまでも豆類作物を栽培してきた実績があるため、国内落花生の次代の生産基地として大きな関心を寄せられている。

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十勝における落花生生産を事業化

十勝における落花生栽培の可能性を受け、落花生生産者間の相互協力と生産技術の向上を目的とした『十勝グランナッツ生産者有限責任事業組合(略称:LLP)』と、生産者と加工・流通業者を結びつけ、落花生の営農指導や加工事業、ブランド展開事業を手掛ける目的で『十勝グランナッツ合同会社(略称:LLC)』が設立された。両組織の活動には、帯広畜産大学が協力し、科学的根拠に基づいた栽培方法の改善や品質・安全性の実証を手掛けている。

十勝における落花生生産を事業化 イメージ

「北海道十勝は、本州に比べると気温が低いので、最初の方は、最後まで熟さないような落花生が出来ていました。」そう話すのは落花生を生産する藤井農場の代表かつLLPの代表も務めている藤井さん。
十勝では、気温や落花生の収穫期に降る霜の影響で、落花生そのものが十分に育成しないことや収穫後の乾燥作業に時間を要し品質が低下してしまうことが問題となっていた。そこで、十勝での落花生栽培方法の確立に向けて、帯広畜産大学の全面協力のもと、落花生(豆類)の弱点である霜が降る前に収穫が終わる品種の選定に関する研究が行われた。研究された技術は地元の農家や生産団体、市民に対して帯広畜産大学から指導を行い、生産者と研究者が二人三脚で栽培技術の普及を目指して取り組んでいる。

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さらに、落花生の量産化においてもう一つ大きな問題となっていたのが未熟莢や不良莢の選別等を行う収穫後調整だ。長年落花生を生産している千葉県や茨城県においても熟練(生産)者の手作業による選別が主流で、機械化が遅れていた。そこで十勝グランナッツ合同会社が中心となって取り組んだのが、機械による生産後調整を行うための施設の整備や近赤外線センサーを用いた不良莢の選別システムの導入だ。

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落花生の収穫後に必要な莢の洗浄、子房柄の除去、乾燥、選別の作業を一括して行う施設を整備し、生産者から購入した落花生をまとめて処理することで、生産者が収穫後調整を行う必要がなくなり労働時間の大幅な削減を可能にした。さらに、戸外での作業が減ることで莢にカビが生えるリスクを防ぎ、落花生をすべて同一の工程で処理することによる品質の斉一化も期待できる。
また、生産後調整の過程のひとつである莢の選別にも、近赤外線カメラを装着した豆類選別機の技術を落花生用に改良したシステムを導入。統一された基準による正確な選別を可能にした。

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十勝グランナッツ合同会社マーケティング戦略部長の熊田さんはこう振り返る。「今日本の落花生の80%を作っている千葉県でも手で選別しているのです。それも熟練の方々が時間をかけて選別してるのです。何とか機械化で選別できないかということで、色々な方々と研究をし、今回の近赤外線選別機の導入に至りました。みらい基金のお金でこれが実現できたということは、まさにみらい基金の目的に合ったことをさせていただいているかなと思っています。」

十勝を日本最大の落花生生産地に

十勝を日本最大の落花生生産地に イメージ

十勝グランナッツ合同会社の田中さんはこう語る。「十勝の中において原料を作って加工して販売をするという中で、それぞれがWinWinの関係にあってそれぞれが利益を稼いでいくということをきちんと蓄積していきたい。さらに、消費者の皆さんに選ばれる落花生でありたいというふうに考えております。」
健康食材として注目され高い需要が見込まれる落花生の生産を通して、十勝地域の農業や経済全体を活性化させるだけでなく、国産落花生の生産量を上げることで自給率向上への貢献も期待できる。十勝を日本最大の落花生生産地にすることを目指して、これからも十勝グランナッツの挑戦は続いていく。

助成先の組織概要

十勝グランナッツ合同会社

十勝地域において落花生産地化に取り組む「十勝グランナッツプロジェクト」のなかでプロジェクトメンバーの出資により設立された加工・販売会社。落花生は栄養バランスに優れた食材であり、日本の高齢化社会に向けた高栄養食品として家庭に届けられるように取り組んでいる。「十勝を新たな落花生の生産地へ」という大きな目標を立てて、落花生の栽培から加工、流通まで一貫した仕組みの構築を目指している。

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