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農業

耕畜連携が育む、地域ブランド創造の輪。

株式会社あぐりんく

株式会社あぐりんくの動画(2024年3月撮影)

地域産飼料から始まる、地域内循環型生産システムの構築へ

生産者の高齢化や後継者不足が深刻化する農業。さらに畜産業は輸入飼料の高騰や高止まりなどにより、経営環境は厳しくなる一方にある。これに対し、農業生産法人の株式会社あぐりんくは、飼料用トウモロコシの生産を推進することで、栄養価が高く安心・安全な飼料を地域の畜産農家に供給する活動を行っている。本プロジェクトでは、耕畜連携の強化だけにとどまらず、地元の小売業や飲食業と一体となって、地域産の飼料で育てた付加価値の高い地域産畜産物の生産・供給体制の構築に取り組む。これらの活動を通して、農業の振興と消費の拡大を図り、地域経済の活性化を目指していく。

助成対象事業の
評価ポイント

株式会社あぐりんくは、山口県宇部市でトウモロコシや米、ぶどうなどを栽培している農業生産法人です。本プロジェクトは、飼料用トウモロコシを生産している同社が中心となり、地域の耕種農家とともにトウモロコシを原料とする飼料製造を拡大し、地域産の飼料を畜産農家に提供することで、"飼料から地域産"である畜産物を生産できるオール山口としての仕組みを構築する取組みです。その実現のため、「やまぐち国産飼料用トウモロコシ高度利用化センター」の建設を推進。地域産飼料の品質維持・向上を図るとともに、効率的・安定的に大量製造を可能にする体制の確立を目指します。これにより、幅広い畜種への継続的な給餌が可能となるほか、耕畜連携による地域産の自給飼料から「真の山口産畜産物」の生産機能の完成が期待されるため、当基金から後押しを行っています。

飼料用トウモロコシの生産から地域産業の活性化を目指す

全国的に生産者の高齢化や担い手不足が深刻化し、農地の荒廃化など多くの課題を抱えている農業。なかでも畜産業は、輸入飼料の価格高騰などにより、事業縮小や廃業を余儀なくされる畜産農家も多く、産業自体の存続が困難な状況となっている。

株式会社あぐりんくは、山口県宇部市を拠点とする農業生産法人。全国に先駆けて飼料用トウモロコシの栽培を手がける同社は、地元の畜産業への活用などを推進する「山口市子実コーン地域内循環型生産・出荷協議会」の中心的役割を担い、活動に取り組んでいる。

株式会社あぐりんく 取締役の工藤さんは、この取組みの目指すべき姿をこのように説明する。
「耕種農家が地元産の飼料を生産し、その飼料を畜産農家が家畜に給餌して飼育する。そうして生まれた地域産という付加価値の高い畜産物を、地域の小売業や飲食業を介して消費者の方に楽しんでいただく。そんな姿をイメージしています。単なる耕畜連携の枠を超えて、いくつもの地域産業を循環する生産・供給体制を構築することで、地域の活性化につながればと思っています」
地域の耕種農家と畜産農家をつなぎ、さらに地域の小売業や飲食業も巻き込みながら、山口産畜産物の生産システムという大きな輪を育んでいく。飼料用トウモロコシを起点とするプロジェクトは、こうして本格的に始動した。

飼料の生産拠点を整備し、効率的・安定的な供給を目指す

飼料から地域産という付加価値の高い畜産品の生産を目指すこのプロジェクト。あぐりんくの工藤さんは、耕種農家にとってはトウモロコシの栽培自体にも多くのメリットがあると語る。
「仮に米の収穫までにかかる作業量を10とすると、トウモロコシの場合は1。つまり1/10の作業量で済むのです。今後は担い手不足による農地の集積が進むと予測されるので、トウモロコシであれば面積的にも作業量的にも対応可能なので、非常に大きなメリットを生むのではないでしょうか」
「また、粒だけを収穫する子実トウモロコシは、収穫後、茎や葉の部分は砕いて農地にすき込んでいきます。これによって土壌が改善され、後作で野菜を栽培すると収穫量が増えたという実績もあるのです」と工藤さんは続ける。

さまざまなメリットをもつ飼料用トウモロコシ。その生産を拡大するには、さらなる体制づくりが必要だと工藤さんは言う。
「まず、トラクターや汎用収穫機といった専用の機械が必要です。また、収穫したトウモロコシを乾燥させ、家畜の飼料に加工する施設も必要となってきます。現在建設中のセンターには、共同乾燥施設と飼料への加工施設が設けられます。飼料にする際、畜種によって粉砕するトウモロコシの大きさを変えなければならないのですが、ここではその調節も可能です。また、単味飼料という各飼料を混ぜ合わせて最終配合飼料に仕上げることも、ここで行えるようになります」

さらにセンターでは、飼料用作物を密封状態で乳酸発酵させ、貯蔵性を高めた飼料にするサイレージ化も可能になるという。
「トウモロコシの子実だけでなく茎や葉なども全部一緒にサイレージ化したトウモロコシWCS(ホール・クロップ・サイレージ)も生産できるようになります。さまざまな畜種に合わせた幅広い飼料を畜産農家さんに提供できる体制が整いました」と、工藤さんは胸を張る。

高騰する輸入飼料の代替として、地元の畜産農家も注目

これらの取組みには、山口市で肉用牛の繁殖、直売などを手がける「杵崎(きさき)の里」の理事 野島さんも強い関心を寄せている。

「うちは乾草をつくるので多くは自給飼料ですが、いわゆるトウモロコシなどの濃厚飼料も購入しています。あぐりんくさんの飼料は、トウモロコシの実も茎も葉もすべて裁断したうえでラッピングして発酵させたトウモロコシWCSで、非常に栄養価が高い。牛に必要なタンパク質や粗飼料なども全部含まれているので、これを補助飼料として与えれば経費の節減にもつながります」と野島さんは、その飼料をこう評する。

「あとは生産量を増やし、安定供給を維持していただければ、円安などによる輸入飼料の価格変動にも対応できるようになると思います」
輸入飼料の長期的な価格高騰は、畜産農家の大きな悩みでもある。輸入飼料の代替として、この地域産飼料に野島さんは大いに期待している。

地域の新しい特産品を創造する、この取組みの将来性に期待

付加価値の高い山口県産の畜産物を生み出すため、地域産業が一体となった生産・供給体制の構築を目指す。山口市子実コーン地域内循環型生産・出荷協議会の事務局長であり、山口市職員でもある佐々木さんは、このプロジェクトの将来性をこのように説明する。
「今回の取組みについて地域産飼料の需要量を調べたところ、山口市と宇部市の畜産農家さんの約6割から飼料が欲しいという回答をいただきました。これはセンターの製造量の約3倍になります。地域で生産された安心・安全で安定供給される飼料へのニーズは、かなり高いということがわかりました」

また、このプロジェクトに期待している点を、佐々木さんは2つ挙げる。
「1つ目は、飼料製造事業。この事業自体と組織が地域のひとつの土台となって、地域の農業や畜産業の活性化につながればと思っています。2つ目は、地域産の飼料で育てた牛をブランド化する事業。この取組みによって牛肉が特産品となり、観光客が多く訪れるとか、地域の消費が拡大するとか、そういうことを通して地域経済が活性化すればと考えています」

地域ブランドの実現が、課題を解決し、経営を豊かにしていく

地域産飼料を生産し、その飼料で家畜を育て、地域産業全体を活性化していこうというこのプロジェクト。あぐりんくの工藤さんは、地元で農業に従事する方々への想いをこのように語る。
「センターが完成することで、生産から加工、供給まで一貫して行える仕組みが整うと思います。耕種農家や畜産農家の皆さんが主体的にこの取組みに関わっていただくことで、『農業って儲からないんだ』とか『農業って差別化が難しいね』といった課題を払拭してもらえたらと思います。そして地域産の生産物をしっかり獲得することで、自らの経営を豊かにし、それが地域の活性化につながっていくことを期待しています」

飼料用トウモロコシの生産から、地域のさまざまな産業がつながり、地域の活力となる大きな輪を広げていく。耕畜連携から始まる地域循環型生産システムが、この国の地方課題を解決に導くひとつのモデルになるかもしれない。

助成先の組織概要

株式会社あぐりんく

山口県宇部市を拠点に、約23haの農地で飼料用子実トウモロコシや水稲などを栽培する農業生産法人。今と未来の大切な子どもたちに「安心・安全でおいしい食べもの」を将来にわたって安定して生産できる仕組みづくり・関係づくりを目指し、さまざまな活動に取り組んでいる。

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