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林業

この苗木から、山と人のみらいがはじまる。

石央森林組合

石央森林組合の動画(2015年6月撮影)

森と人のみらいをつなげる、循環型林業の新しい挑戦

山で木を伐採し、使い、新たに植えて、育てる、循環型林業の確立は、日本の林業の大きな課題だ。日本でも有数の森林県である島根県の浜田市に位置する石央森林組合では、日本中の森林が同様に抱える課題を解決するため、新たな苗木の開発と生産に挑戦。林業と地域が手を取り合うという新たな取り組みは、これからの林業のあり方を示そうとしている。

助成対象事業の
評価ポイント

このプロジェクトは、全国的に不足している苗木の生産により"林業(山)の再生"に寄与することに加え、社会復帰促進センターとの連携や高齢者の雇用を通じた社会福祉も併せて実現していこうとする取組みです。
「伐って、植えて、育てる」という"林業(山)の循環"の大きなパーツ「植える」を実現して将来に林業を繋いでいきながら、地域での農福連携も進めていきます。
創意工夫に溢れた取組みで、他地域においてもモデルとなるような挑戦的な事業として、全国に広がっていくことを願って、後押しを行うことにしました。

循環型林業の確立が急がれる中、注目される新たな苗木

循環型林業の確立が急がれる中、注目される新たな苗木 イメージ

全国各地で戦後から高度成長期にかけて植えられた森林の多くが伐採期を迎えている。石央森林組合がある浜田地域でも40年~50年以上の成熟期を迎えたスギ・ヒノキ・マツなどの森林資源の伐採が活発となっている。
一方で、伐採後に、再造林していくために必要な苗木が全国的に不足している。新たな森林作りには育苗・植林への高いコストや長い年月が必要となるため、伐採後の植林はなかなか進んでいないのが現状だ。

循環型林業の確立のために石央森林組合が取り組んでいるのは、「コンテナ苗」の改良だ。コンテナ苗とは、専用のコンテナで育てる根鉢付きの苗のことで、苗畑で育てる通常の苗に比べ、育苗期間が短く、植栽時期を選ばずに育苗できるという利点がある。さらに、石央森林組合のコンテナ苗はその生産方法にも大きな特徴がある。

社会復帰の支援へとつながる林業の取組み

社会復帰の支援へとつながる林業の取組み イメージ

石央森林組合のコンテナ苗の大きな特徴として、林業と地域が連携して生産に取り組んでいることがあげられる。
島根あさひ社会復帰促進センター(法務省所管の刑事施設)の訓練生やシルバー人材センターの高齢者の方々と連携しながら苗を育てているのだ。
"社会復帰をしようとする人たちと林業がつながることで、何か力になれないだろうか、支援できることは何だろうか"と地域全体で考えていたときに、コンテナ苗の生産を手伝ってもらう取組みが生まれていったという。

この取組みは訓練生の社会復帰の支援につながり、高齢者の雇用や生きがいを生み出すことにもつながっている。
また、彼らの協力を得ることで、低コストで苗を生産できる。林業と地域が連携する新たな取り組みについて、 「訓練生は午前中から午後にかけて作業をし、高齢者は夕方から働いています。それぞれ土づくりや種まき、水やりなどをしていただきながらコンテナ苗を育てています。コンテナ苗生産の技術を身につけてもらいたいと思いますし、訓練生がセンターを出た後、学んだことを生かして浜田市で林業に携わりたい、という方が出てくれば、非常に嬉しいですね」 と、組合長の小川さんは語ってくれた。

また、林業と地域が連携してコンテナ苗の生産に取り組む他に、苗の試作にも独自の工夫を凝らしているという。
「通常の苗は植林できる大きさに育てるのに約24ヵ月から36ヵ月かかりますが、コンテナ苗は約18ヵ月と育苗期間を短くすることにも成功しています。また、当組合ではコンテナ苗の培土に粉炭を配合しています。そうすることで、通常の苗と比べて発芽率が格段に良くなり、病気の少ない苗木になります。循環型林業の確立に向けてコンテナ苗を安定的に生産できる体制を作り、事業化を目指していきたいと考えています」コンテナ苗の試作を続けている久保田さんはこのように語り、手応えを感じている。

林業と地域の連携、苗や培土の研究。これらに取り組みながらコンテナ苗の生産をすることで、石央森林組合は良質で低コストなコンテナ苗を森林所有者に供給できるようになる。そうすれば、「木を新たに植えて育てる」際にかかっていた森林所有者の負担も小さくなり、植林がしやすくなる。このコンテナ苗は森林資源の循環に大きく貢献していくといえるだろう。石央森林組合の取り組みは、地域林業が発展していくモデルとなりえる可能性を秘めている。

林業を持続可能な産業とするために

林業を持続可能な産業とするために イメージ

短期間で育苗でき、低コストで苗を生産することができるコンテナ苗は、循環型林業の確立に大きな役割を果たすことができる。石央森林組合はみらい基金の助成金を活用して、苗を育成するビニールハウスや培土の研究をする研究棟などの施設を建設し、苗の研究・開発に取り組んでいる。これによって、季節を選ぶことなく、年間を通して安定的に苗を育てることが可能になり、効率良くコンテナ苗を生産できる見通しだ。

国内のバイオマス発電での木材チップの利用や、韓国や中国から内装材としての木材需要も高まっていることから、今後も森林の伐採は増えていく。石央森林組合の生み出す良質なコンテナ苗への需要も高まり、伐採された山の再造林へ向けた生産・販売もますます拡大されていくだろう。

久保田さんはこう話す。
「みなさんと連携しながら育てているコンテナ苗で、低コストでの再造林が実現できれば、循環型林業の確立に向けて、大きく前進すると思います。新しい苗を育てていくと共に、IターンやUターンの若い人たちを呼び込むための情報発信も積極的に行い、次の世代と森林作りをするのが目標です。プロジェクトを通じて浜田市と林業の活性化に貢献したいと考えています。また、持続可能な森林経営を実現させて、林業に関心を持つ人たちを増やしていきたいですね」
地域と連携しながら林業を発展させる新しい取り組みは、日本の林業が抱えている問題を解決する糸口となるだろう。石央森林組合がコンテナ苗の生産で描く林業のみらいは、地域とともに大きく成長している。

助成先の組織概要

石央森林組合

島根県浜田市にて1995年2月1日に設立。
森林整備事業・伐採した木材の販売・間伐材の加工事業などの林業振興を手掛ける。
「伐って、使って、植えて、育てる」循環型林業を目指し、持続可能な森林経営を推進している。

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